研究テーマ

研究の概要

本領域では、身体の情報が時空間を超えて流通する次世代情報通信環境における人々の社会経済的意思決定を、延約1万人規模の大規模行動実験研究、脳科学実験、扱うべき身体性情報の検討作業を中心に、行動経済学、心理学、脳科学、情報学を有機的に融合したアプローチによって検討するデジタル身体性経済学を学術変革領域としてあらたに提唱します。

A01

大規模行動実験と生態学的ライフログ研究によるデジタル身体性経済学のモデル化

行動経済学班

行動経済学班では、社会成員がたとえ社会的効率状態を望んでいたとしても、個人合理性や利己性ゆえに、社会的最適解に到達することができず局所解に収束してしまう社会状況が、個々人の身体感覚の共有によって乗り越えられるのかを、大規模行動実験と生体反応計測を伴う生態学的ライフロギング研究によって検証し、身体の情報が時空間を超えて流通する次世代情報通信環境における人間行動原理の解明に寄与しうる社会効用モデルを構築することを目指します。

メンバー

B01

自己感の変容をもたらすデジタル身体性神経基盤の解明

脳科学班

脳科学班では、デジタル身体性情報が起こす自己と他者の関係性変容の神経科学的知見を解明します。個体間の身体性情報共有は、他者の経験を自己のものとして捉える自己感覚の拡張を引き起こし、従来の経済学で用いられてきた効用関数における自己と他者の利益にかかる計算の時空間領域を拡張しうることが考えられます。また、このような効用関数の拡張は、情動と意思決定の神経基盤から捉えることもできます。一方で、身体感覚の共有は、他者への心理的接近(好感・信頼・同情)や回避反応(嫌悪、不信、妬み)といった情動の個人差を生み、それに伴い意思決定(行動)の個人差が生じることが予測されます。本研究では、デジタル身体性情報の共有がもたらす、人の認知行動原理変容の個人差神経基盤を解明し、デジタル身体性によって生じる新たな効用モデルにおけるパラメータを探ると共に、デジタル身体性情報共有による脳可塑性も明らかにします。

メンバー

C01

自己感の変容をもたらすデジタル身体性ネットワーク基盤の設計

身体性情報ネットワーク班

身体性情報ネットワーク班では「デジタル身体性経済学」を創成するための、情報ネットワーク基盤に関する学術を構築することにあります。具体的には、デジタル身体性情報(触覚の振動情報や心拍等の生体情報)が伝送・共有されたときに、それが情動・行動へどのような影響を及ぼすのか検討することと、その効果を奏するネットワークを設計することであります。こうした目的のもと、身体性情報ネットワーク班では以下の2点の問いを検証します。

(問1)「デジタル身体性経済学」が扱うべき身体性情報とは何か?:本研究計画が想定する身体性情報が流通する社会において、どのような身体性情報が共感や信頼、利他行動を 引き起こしうるのか、既存研究の整理検討とともに、適宜、人間を対象とした実験により明らかにします。その結果に基づき身体性情報の計測・提示技術の選定と設計指針を確立します。

(問2)「デジタル身体性情報」をどのように伝送するか?:ネットワークを介したデジタル身体性情報の伝送を、1対1、1対多、多対多と異なるネットワーク形態で実現するための設計指針を明らかにします。特に、代表者が進めてきた触覚伝送(振動情報)に関する汎用化/標準化の技術とノウハウを起点に、A01班・B01班でも使用可能なシステムを実装します。

メンバー

学術変革領域B 「身体性経済学の創成」から学術変革領域Aへ

総括班

  • 研究推進統括
  • 国際戦略
  • データインフラストラクチャーの構築
  • A01
    行動経済学班
  • B01
    脳科学班
  • C01
    身体性情報ネットワーク班

アドバイザリーボードの設置

行動経済学、倫理学、哲学、情報学、脳科学の各種学会との交流を活かし、領域マネイジメントを外部評価する体制の整備

ムーンショット研究との有機的連携

ムーンショット研究「身体性と社会性が調和した共体験を生み出すサイバネティック・アバター技術の開発」との有機的連携